涼鈴雑多工廠

涼鈴雑多

〜暇人工作員のブログ〜

輪ゴム銃のブローバック機構まとめ・解説

はじめに

輪ゴム銃を作る者であれば、誰もが一度は憧れると言っても過言ではない。
それがブローバックする輪ゴム銃です。

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画像はイメージです。(お気に入りのモデルガンです)
僕も作りたいですはい。

新型コロナウイルスの影響で色々あり、レーザー加工機を使用しての創作活動に支障が出そうなので、半年くらいはなるべく家にあるCNCフライスを使用し切削加工を主とした方向へシフトしようと考えています。

今までの2(.5)次元設計はレーザー加工機で大量に生産することを考え行ってきたものです。
しかしCNCフライスで加工をするならば、レーザー加工機では不可能だった3次元加工が可能となり、生産数は減りますが非常に複雑な機構を持った輪ゴム銃が作ることができるのです。

勿論従来の設計方法でも問題なく製作できるのですが、このような機会でもない限り慣れていて楽な方ばかりに傾いていくのが僕という人間です…
ということで、CNCフライスを使ってブローバックする輪ゴム銃を作ります!!

その下準備としてブローバック機構の復習をするとともに、ついでにまとめてブログネタにしてしまえ、ということで書き始めたのがこの記事となります。
ブローバックする輪ゴム銃を作りたいと考えている同志の役に立つことがあれば幸いです。

分類

ブローバックする輪ゴム銃と言ってもそれなりに種類があります。

まずブローバックの動力源。
一番重要なところです。

実銃のように火薬の燃焼ガスの圧力を利用することも、エアソフトガンのようにガスの圧力や電気エネルギーを利用することもできません。

基本的に輪ゴム銃はゴムと人体以外の動力源を持たないので、必然的にこの2つで、具体的には「弾の輪ゴム」「引き金」によってスライドが動作することになります。
しかし、大まかに2つに分けられるだけで、ブローバック機構はさらに細分化しているため、下に実例を交えてまとめていきます。

次は排莢アクションの有無。これは見栄えのよさが半端ないですよね。
ブローバック機構そのものの動作には関係がないので無くても全然成り立つのですが、おまけで付け加えやすいものだと思います。
但し、スライドストップの動作にマガジン内のスプリングを利用したものがある(僕の持ってるモデルガンはそうでした)ため、ブローバック機構によっては必要になることがあるかもしれません。
どうせ複雑な機構を組み込んでブローバックさせるなら、排莢までさせてしまいたいですね。

引き金動力式

完全一体型

ブローバック機構のなかで最もシンプルな構造です。
引き金とスライドがくっついていて、引き金を引くとスライドも後退します。引き金を放すと牽引ゴムによって引き金とスライドが元の位置に戻ります。

ゴム銃のオッグクラフトさんで解説されている斜面滑射方式に近いイメージです。

引き金を引く速度でスライドが動くので、ゆっくり引くとスライドもゆっくりと動きます…
(映像で引き金を素早く引いているのを見ると、なんか…悲しい気分に…)
引き金を引き切ったままだとスライドは開きっぱなしです。
個人的にはブローバックと認めたくないラインです…
心の中で似非ブローバックと呼んでいます。

追記

僕と同じ感性の方がいらっしゃいました!!

増幅連動型

上に次いでシンプルです。
引き金の回転する動きを長い腕で増幅(引き金が1cm引かれたなら、スライドは5cm後退する、というイメージ。引き金は重くなる。)し、スライドを押します。
一定以上引き金を引くとスライドが元の位置に戻り、引き金を引き切ったままでもスライドは閉じたままになります。
引き金を放すと噛み合い、再び連動するようになる、という構造です。

1:48の機構の解説が分かりやすいです。
残弾が無くなると噛み合わなくなり、引き金を引いてもスライドが動かなくなる機能があるようです。

0:28付近で引き金に合わせて倒れているのがその腕です。
1:30から機構の解説があります。最高に分かりやすいですね。

引張瞬間解放型

最も複雑で最もリアリティが高い構造(個人の感想)です。

引き金をゆっくり引いてもスライドは動かず、一定の位置に達すると急にスライドが前後動します。
スライドを後退させるゴムを引き金で引くため、引き金は重くなります。

誇張抜きで、世界で最も有名なブローバックする輪ゴム銃です。
僕も初めて観たブローバックする輪ゴム銃はこれでした。
正直なところ、この動画だけでは機構がさっぱり分からないのですが、これ以前の動画で参考にされた方について言及されていました。
おそらく同じ構造だと考えられます。
それが下の動画の構造です。

この動画は僕が初めてブローバック機構について理解できたものです。

  1. スライドは閉じる方向にテンションが掛けられ、フレームに爪でロックされている。
  2. 引き金を引いていくとスライドを開く方向にテンションを掛ける輪ゴムが引っ張られる。
  3. 2で伸ばされていく輪ゴムの張力が1のスライドを閉じる輪ゴムの張力を上回ったところで引き金が爪のロックを解除し、スライドを解放する。
  4. スライドは2で伸ばされた輪ゴムに引かれて後退し、引き金とスライドの連結が解除される。回転翼から一発発射される。
  5. スライドは1の輪ゴムに引かれ、閉じる。
  6. 引き金を定位置に戻すと、再びスライドと噛み合う。

この構造はグリップ内部をブローバック機構が占有しないため、排莢アクションやスライドストップの機能を持たせることができます。
また、この構造は実用新案として(実用新案登録第3169624号)登録されています。

改良型もあるようです。
機構が少しシンプルになり、それぞれの部品強度が上がっているように見えます。

初めて見たとき、これは上の増幅連動型だと思っていました。
しかし動画の28秒程で表示される図面を見ると、引き金が動かす腕の向きが逆なんです。
スライドと本体と図面を同時に表示して睨めっこした結果、引き金とスライドは直接連動しているわけではないんだと理解しました。

  1. 引き金を引いていくにつれ爪が腕に掛かり、腕が反時計回りに回転。牽引ゴムに弾性エネルギーが蓄積される。(スライドは動かない)
  2. 腕がスライドの受けを超え噛み合う状態になる。(部分的なラチェット機構)
  3. 引き金を一定まで引くと、腕を引っかけている引き金の爪が引っ込み腕が解放。牽引ゴムの弾性エネルギーで時計回りに回転しスライドを押す。
  4. 腕が牽引ゴムに引かれて定位置に戻る。
  5. スライドが定位置に戻る。

排莢アクションを無くしてグリップ内に機構を詰めるとここまでシンプルになるのかという…感動です。一番好きですこの機構。合理的すぎる…

追記

同じ方のもう少し昔の動画に構造解説がありました…44秒からです
答え合わせできて嬉しいところですが…先に見ておけば…ぐふ…

輪ゴム動力式

回転翼連動型

回転翼式輪ゴム銃の遅延装置をブローバック機構で代替したような構造になっています。
セミオートでもフルオートでも動作しますが、遅延装置の問題点と同じく撃ち切る寸前の輪ゴムの張力によっては動作不良を起こす可能性があります。
また、残弾が0になることは即ち動力源が無くなることなので、空撃ちはできません。(引き金を引いてもブローバックはしないという意)
他の輪ゴム動力式の構造とは異なり装填中のゴムの張力を利用しているため、ブローバックによる発射される輪ゴムの運動エネルギーの減少(飛距離・威力の減少)がありません。

5:23で動かしていますね。
銃口と反対側に向かって引っ張られているボルトを回転翼が回転する際に銃口側へと押し、ボルトはその後定位置に戻る、というサイクルのようです。

1フレームずつ見ていったのですがよく分かりませんでした。
輪ゴムの位置から考えて、おそらく

  1. 開く方向にテンションが掛けられているスライドのロックを引き金が解除。スライドが後退する。
  2. 後退したことで衝突した部品が回転翼のロックを解除して回転。一発発射。
  3. 回転翼の運動エネルギーが回転翼をロックしていた部品に伝わり、それがスライドに伝わって前進させる。(スライドを後退させるゴムの張力よりもこちらのが強い。)回転翼はその後勝手にロックが掛かる。
  4. 引き金のスライドのロックに引っかかり、固定。

というサイクルになっていると考えられます。
フルオート時は4を飛ばして1に戻ります。
残弾が0になると自然とスライドオープンです。
回転翼の運動エネルギーでスライドを前にすっ飛ばすわけなので、回転翼に掛かっている輪ゴムの数によってかなりの振れ幅があると思うのですが…フルオートでも最後の一発まで撃ち切れていることに驚きです。

傾倒滑走型

どちらも同じ構造です。
回転翼(これらの動画では歯車)から発射された輪ゴムが銃身の上にあるレバーに引っかかり、レバーを倒して滑りながら飛んでいきます。
傾倒滑射式と回転翼式を合わせたような構造です。
レバーは倒れることでボルトを動かし、その後ボルトとレバーは復帰します。
また、フルオート時はレバーかボルトが元の位置に復帰しないと次弾が発射されないような構造になっているようです。(上の動画の1:54でレバーを長いものに交換すると、倒れるのに時間が掛かるようになり連射速度が低下することが解説されています。)

収縮牽引滑射型

この構造では連射はできないのですが、非常にシンプルで分かりやすい構造だと思います。

  • スライドを閉じる方向にテンションを掛ける輪ゴム
  • スライドを開く方向にテンションを掛ける弾の輪ゴム(1の輪ゴムより力は強い)
  • スライドが開かないようにロックを掛ける引き金

の3つがカギです。

  1. 弾の輪ゴムを装填するとスライドは開こうとするが引き金がロックしている。
  2. 引き金を引くとスライドが開き、スライドの下にホールドフックが引っ込んで弾が発射される。
  3. スライドを開こうとする輪ゴムが無くなり、スライドは閉じる。

構造がシンプルなだけに、まだまだ可能性を感じますね。
改良次第では連射化も不可能ではない気がします。

最後に

調べていて驚いたのですが、レゴ製のものと最後のもの以外全て日本人が作っているようなのです。
題名や字幕が日本語なのはすぐに分かったのですが、普通に英語題名で英語字幕でも、過去の動画は日本語だったということが…

なんだか同じ日本人として誇らしいです!!
僕も早くブローバックする輪ゴム銃を製作して、並び立てるようになりたいです。

それと、動画の紹介は全部無断で行っておりまして…取りやめて欲しいといった件や構造の解釈が違う、名称はこっちのが良い、みたいなことがありましたら、コメント欄にて教えていただきたいです。よろしくお願いします。